15.1「醒めない」
★「醒めない」
◉記念すべきタイトルトラックですね。この曲だけは、やはり今作のアルバムの中でも異質の存在だと思う。
マサムネが「ここ最近ゆったり目の一曲目が続いたので明るめの曲を作った」「オープニングの曲として最後に作った」と発言した通り、正に初っ端の曲に相応しい名曲です。
◉サウンド面で活躍してるのは特にベースとドラムのリズム隊。ゴリゴリのベースに軽快にモータウンビートを刻むドラムは勢いがあり、今までになかった感じじゃないですかね。
ベースの入りのスライドには一気に心を持っていかれる気がします。Aメロのベースがうねらないのが良いですね。真っ直ぐなサウンドって気がします。
今回はアルバムを通じてリズム隊の活躍が光ります。特にドラム。
それに反してテツヤのギターの音作りはかなり柔らかく作っており、それが相乗効果を生み出しています。
最初聴いた時は正直「クリスマスソングっぽいな」と思いました。
◉歌詞。かなりストレートでメッセージ性があると思います。
昼の光を避けて ブサイクな俺の歴史上
ギターはアンドロジナス 氷を溶かしてく
これはインディーズの頃の話ですかね。丁度この曲作りの前後にあのボウイの訃報が届き、「アンドロジナス」と言うのはそこから来た部分もあるそう。「アンドロジナス」は「性の差異を超えて自由に考え行動しようという考え方」という意味があるらしいので、ロック、延いては音楽は自由だという考え方があるのでしょうね。
まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる
さらに育てるつもり
これはブルーハーツを聴いた時の衝撃も含んでいそうです。スピッツの前身バンドは活動休止になっていますし。
ですが、音楽に限らず誰にでも何かしらに対して「初めての衝撃」はあったと思います。初心を忘れない、という意味にも取れそうです。
任せろ 醒めないままで君に 切なくて楽しい時をあげたい
もっと膜の外へ なんか未知の色探して
さらに解き明かすつもり
二番はスピッツからのメッセージソングとして取れそうです。「切なくて楽しい時」とは今作の他の楽曲、及びこれまでとこれから生み出されるであろう楽曲の事ですかね。
「さらに解き明かすつもり」と言われるのは、ファンとしては嬉しい限りです。
見知らぬ人が大切な人になり
相性悪い占いも余計に盛り上がる秘密の実
「見知らぬ人とが大切な人になり」は今作のテーマだと思います。今作のテーマはズバリ、草野さんの言っていた「死と再生」を転じて「邂逅と離別」に尽きるかなと。
「君や色んなものに出逢って初めての感情に出逢う」、そして「いつかは離れる時が来る」。
前者は「ガラクタ」「グリーン」、後者は「雪風」などがそれを示しているかな。
ですが、ただ「離別」するだけで終わらず、前を向いて歩みを進めるのが今作だと思います。この辺は後々。
相性悪い占いも余計に盛り上がる秘密の実
スピッツの天邪鬼な面が良く出てると思います。「恋は障害があるほど燃え上がる」とは言われますが、恋に限らずそんな感じかな?
◉アルバムの中で
この「醒めない」は比較的ストレートな歌詞なのもあり、あまり難解な点はありませんがそれだけに強いメッセージ性を持った曲でしょう。前々作前作の一曲目の「ビギナー」や「未来コオロギ」と似たものを感じます。
また、上で示したようにこのアルバムのテーマを示す重要なオープニングテーマと言えるでしょう。
そして、この曲のもう一つの側面としては、最後「こんにちは」の後に再び戻ってこられる事がありますがこれも追々。
◉好きなフレーズ
「ギターはアンドロジナス 氷を溶かしてく」